相続時にはさまざまな手続きが発生します。
事案によって必要な手続きは多少異なってきます。
手続きの期間も長くなるので、まずは全体像を把握しておきましょう。
死亡届の提出
故人が亡くなったときにまず行わなければならないことは「死亡届」の提出です。
こちらは病院から発行される「死亡診断書」とともに役所に提出します。
死亡から7日以内に提出とされていますが、死亡届を提出しないと火葬ができないため葬儀屋さんが代行してくれるのが通常です。
死亡診断書は後に生命保険の請求等で必要になることがあるので何部かコピーしておくのがオススメです。
また葬儀にかかった費用はのちに相続税を計算する際に相続財産から控除することができます。
手伝ってくれた方への謝礼など領収書がない支出も記録するようにしましょう。
また故人が死亡したことを銀行が知ったときは直ちに口座が凍結されることになります。
預金の引き出しはもちろん、口座引き落とし凍結される前に対策をするようにしましょう。
預金口座については別で詳しく解説することにします。
相続開始3か月以内にすること
遺言書の有無を確認する
まず確認したいことは「遺言書」の有無の確認です。
遺産分割を終えた後に遺言書が発見されると、手続きがまた一からやり直しになってしまいます。
ですので遺言書がありそうな場所を十分に確認しましょう。
自筆で書かれている遺言書が発見されたときは「家庭裁判所で検認」をしなければいけません。
相続人となるものの調査
次に行うことは相続人となるものの調査です。
これは故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍を取得する必要があります。
戸籍についても別で詳しく説明しますが、連続した戸籍を取得することで故人の親族関係が把握できます。
それによって相続人が確定できるということになります。
相続人が妻と子だけなどシンプルな場合は戸籍収集もそこまで大変ではありませんが、兄弟姉妹などが絡む場合だと複雑になり、戸籍収集も大変な作業になります。
相続財産の調査
次に相続財産の調査です。
注意したいことはプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も十分に調査する必要があるということです。
プラスの財産しかないと思っていて相続をしたけれど、後に負債が発覚し借金を負った事例もあります。
プラスの財産については、「不動産」「預貯金」「株などの有価証券」などが一般的に思いつくものです。
最近は動産(物)についても価値のあるものは詳しく調査されて相続税の対象となる場合もあるため注意が必要です。
マイナスの財産については、「借入金」「ローン」「クレジットカードの未決済金」「未納の税金」などが挙げられます。
故人が事業を行っていた場合などは事業に関する未払い金などが存在する可能性もあるので注意が必要です。
生命保険の請求
相続放棄または限定承認の検討
相続財産を調査した結果、明らかにマイナスの財産の方が多い場合は相続をしない方が良いと考えられるます。
相続をしないという手続きを「相続放棄」といいます。
明らかにマイナスとはいえないときなどは、プラスの財産があるときのみ相続するという「限定承認」という手続きもあります。
それぞれの手続きの期限は相続開始を知った日から3か月以内となっているので注意しましょう。
それぞれの手続きで以下のような要件等の差異があります。
相続放棄 | 限定承認 | |
---|---|---|
申述人 | 放棄する相続人 (未成年者または成年被後見人の場合は法定代理人) | 相続人の全員 |
必要書類 | 相続放棄申述書 申述人の戸籍謄本 被相続人の戸籍謄本 | 限定承認申述書 財産目録 申述人の戸籍謄本 被相続人の戸籍謄本 |
申述先 | 家庭裁判所 | |
期限 | 相続開始を知った日から3か月以内 | |
費用 | 印紙代800円+返信用切手代 (弁護士or司法書士に依頼する場合は別途費用が発生) |
所得税の準確定申告(相続開始4か月以内にすること)
故人が死亡した年の所得税は相続人が申告を行わなければなりません。
通常の確定申告は1/1から12/31までの期間についての申告を翌年の3/15に申告することになっています。
故人の場合は1/1から死亡日までの分を、相続開始後4か月以内に申告することになります。
これを「準確定申告」といいます。
なお通常のサラリーマンは勤務先で年末調整を行いますので、準確定申告は不要になります。
しかし、給与以外に20万円を超える所得がある場合は申告の義務があります。
準確定申告は相続人全員の連名で申告します。
準確定申告によって支払った納税額または還付金は相続財産に組み込まれます。
申告の方法は通常の確定申告とほぼ同様です。専用の用紙等はありませんので税務署の手引きを確認しましょう。
相続開始10か月以内にすること
遺産分割協議
相続人の確定と、相続財産の特定ができたら誰がどの財産を相続するかを決める「遺産分割協議」を行います。
具体的には相続人全員の話し合いによって決めます。
必ずしも全員が集合して話し合う必要はなく、電話等で連絡を取り合って決めることもできます。
しかし、協議の成立には相続人全員の合意が必要です。
また、一度協議が成立すると一方的に解除できないため、十分に話し合いを行いましょう。
遺言によって遺産の分割方法が指定されている場合はそれに従います。
遺産分割協議がまとまったら「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書を作成する目的は以下の通りです。
・後のトラブル防止
・不動産の相続登記
・銀行預金の名義変更
・軽減税率の特例を受ける
遺産分割協議書の作成のポイント
・書式等は何でもOK。手書きでもワード等で作成も可。
・相続人全員が実印で署名押印
・誰がどの財産を取得したか明確に分かるように記載すること
不動産の相続登記
不動産を相続した場合は相続人に名義変更をしなければなりません。
この名義変更を所有権移転登記といい、相続を原因として行われる所有権移転登記を「相続登記」といいます。
2024年4月から相続登記が義務化されて罰則もつくようになりました。
具体的には所有権を取得した日を知った日 or 遺産分割が成立してから3年以内に相続登記をしなければなりません。
これに違反した場合は10万円以下の過料が課されます。
3年の期間はありますが、相続登記を行わなければ売却や担保設定ができません。
いずれ必ず必要となる手続きなので早めに行いましょう。
相続税の申告・納付
相続税の申告と納付は相続手続きの最終ステップといえます。
まず相続税が発生するか否かを判断することが必要です。
これは相続税の基礎控除の額によって変わります。
【基礎控除の額 = 5000万円 + 1000万円 × 法定相続人の数】
具体例
相続人が配偶者1人と子供2人の場合
基礎控除の額 = 5000万 + 1000万円 × 法定相続人3人 = 8000万円
この例の場合、相続財産の額が8000万円以下であれば相続税は発生しません。
相続税が発生する場合は相続税の申告書類が少し複雑になります。
相続税についてはまた別で説明したいと思います。
以上が相続手続きの全体の流れとなります。
実際の相続手続きは各ケースによって異なってきます。
相続が発生した場合、まずは自分のケースを把握することが必要です。
その結果次第で自分で行う方がいいのか、プロに頼むのがいいか判断すると良いです。
当事務所ではお客様に必要な手続きをスピーディーに判断し、必要なサポートを提供します。
是非相続が発生した場合は迷わずにご相談下さい。